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真に受けないこと

「フリーランス向け嫌な仕事の断り方・交渉の仕方」という秀逸なエントリを読んだ。あと二ヶ月でフリーランス生活も満二年を迎えるが、身につまされる話だった。

内容に異議はないが、実体験から付け加えるとしたら、担当者の意図せざる噓に引っ掻き回されないことが大事だ。フリーランス生活の最初の頃にはこの手のことでおおいに悩んだものだが、考え方を変えてからは気楽に対処できるようになった。それにこのところずっと変な目に遭うことはなくなってきているので、大変ありがたい。

例えば、発注元の体制が変更になったりして、いわゆる「上からの意向で」突然契約が変更になったりすることはよくある。ウェブやアプリはいつも儲かるとは限らないし、利益が出なければ発注元としては基礎的な開発が済んでディレクションなどの実績も手に入ったのだから、あとは開発先を単価の安いところに切り替える方が得だというのは経営的な視点から必ずしも間違いとはいえない(ソフトウェア開発としては間違いだと思うが)。ただそれだけのことだ。

そして、そんなとき、ビジネスなので窓口になって板挟みになった担当者が気の優しい人なら、新しい契約関係の書類を差し出しつつ「いや、この変更で急に八木さんに仕事を回さなくなるとかそういうことはないんで」なんて言ってくれたりする。ありがたいことだ。しかし、その言葉には噓はないが、実際にはいくらその人が善良なること白い布のごとき御仁であっても、上の方針に逆らってまで何かすることなどできないのが勤め人の定めなので、結果的には何も出来ないしその言葉は噓になる。これが一番困るし恐ろしいケースだ。

噓をつかれるのは、それだけなら信義の問題であり、まあうれしくはないが別にそんなにダメージはない。逆に信義を通して「あんな会社辞めてやりましたよ!」とかいわれてもこちらとしても責任はもてない。しかし、フリーランスはサラリーマンではないので長期的な契約が解除されたりすると次の仕事をちゃんと確保しないといけなくなるので、下手に「お優しい担当者」を信用して案件を待っていたりすると、これは致命傷になるのは間違いないのだ。実は22歳くらいの頃、当時の仕事はソフトウェア開発ではないのだが、その手のことに巻き込まれてうっかり担当者を信じたお陰で酷い目に遭った。

そこで学んだ教訓は、交渉では相手の話すことを真に受けてはいけないよ、という単純な事実だ。人間は基本的にお優しい生き物なので、面と向かった相手には耳に心地いいことを話したがる。たぶん、そうでないと自分の耳が嫌がるからだ。だけど、相手が目の前にいなければ、世界中の飢えた子供たちを見殺しにして食事を残したり、不公正な裁判を平気で無視して是認したり、石原慎太郎に投票したるする。特別な悪人じゃなくたって、あなただってそうだろうし、ぼくだって部分的にはそうだ。それが人間の生き方というものだ。猫を飼うことやバスに乗ることに反対しても賛同者はなかなか得られないように、付き合う相手を厳正に善人ばかりから選ぼうとしてもなかなか生きてはいかれないのがこの世の定め。そこら辺はなるべくいい加減に考えた方がいい。ただしおのれの身を守ることはお忘れなく。

Posted by on 6月 28, 2012 in Fun, life, Work

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