T

企業における差別

ここギコを読みながら思い出したのだが。

先日、社内ミーティングで、会社の主力製品のコーディング作業にプロパーの社員だけでは手が足りないため、現在業務委託で社内に常駐してもらっているメンバーから誰を追加でアサインするかが議題になった。開発のマネージャたちが集まり、コーディング担当者の力量や経験を加味しながら誰が適任か議論していたのだが、だいたい3人くらいに候補が絞られてきた頃、出席者のひとりであるXXマネージャが突然「Aさんはダメですよ、リスクが高いです」と言い出した。あまり技術的な知識がなく、特にPHPのウェブアプリケーションについてはほとんど経験がない人で、開発に絡んでもいないだけに、なぜそんな頭ごなしに否定するのか驚いた他の出席者が理由を聞くと、いたって簡単、そのAさんが中国人だからなのだそうな。曰く、中国は著作権についての意識が日本とは違うから、ソースコードを持ち出されるリスクが高くて云々。一同ギョッとしていると、XXマネージャは今度は「そういえばBさんって結婚してますよね?」と質問して、「だったら滅多なことはしないという抑止力も働くか…」とひとりごちていた。

ごくありふれたミーティングが、国籍または人種による差別、結婚の有無による差別の現場となった瞬間である。

同類と思われるのも嫌なので、XXマネージャにそのことをたしなめると、もちろんそういう意見が差別といわれてしまうかもしれないことは知っているという。しかし、ビジネスの厳しい世界では現実的な対処が必要であり、決して差別を助長したりするつもりはないとかなんとかごちょごちょつぶやいてひとりごちていた。基本的に他人の話を聞かない人なのだ。

で、まあ、言い訳としては、そりゃそうだろう。この手の差別というのは、露骨な他人への嫌悪感の表明としてよりは、現実社会の問題をかんがみると致し方がないリアリスティックな対応なんだよ、仕方がないんだよ、という世間知として、「野暮は承知で」表明されることの方が多いかもしれないくらいだ。あるいは、ときには他人への気遣い(「左翼の宣伝に騙されてあの劣等な連中に付き合わされてるキミはかわいそうな人だよ」)として、またあるときには科学的な知識の一端として語られることもあるかもしれない。

だが、バカがおのれのバカを認めてもバカがなおらないように、差別を差別と認めても、差別がその心から消えるわけではない。もし仮に、いやこれはあくまで仮にだが、致し方なくしてしまっている差別というものがあるとして、それが間違った知識の上に成り立った単なる偏見でしかなかったら、それでも致し方なくしてしまっている差別といえるだろうか。

なんでも政治的に正しいのがいいのかというと、まあそうでもないんだろうが、しかし世間知やおせっかいな気遣い、似非科学でわれわれが判断を誤らなければならない理由はどこにもない。ソースコードの持ち出しリスクはどこの現場にもきっと常に一定して存在しているのだが、では社内の中国人のメンバーがもし持ち出しをするとしたら、それは彼が中国人であることに原因があるのだろうか。彼女が結婚していないことにその原因があるのか。本当にそうか?管理者のはしくれとしていわせてもらえば、そんなのは管理者の言い訳をおのれの差別的意識で塗り替えただけの戯言でしかない。じゃあ聞くが、中国の地方出身者である彼がコンビニでバイトしたとして、その金を仕送りにしたら彼の家族は裕福な暮らしが出来るかどうか、あなたは知っているだろうか。今の仕事がなくなった時、彼は国に帰ってすぐに仕事にありつけるのかどうか知っているのだろうか。彼の日本でもらっている給料が、中国で同じような仕事をしたときにもらえる給料と比べてどれだけ違うというのか。じゃあ中国についてそんなに詳しいってんなら、ワルシャワの物価がどれくらいか、ベッドルームが1つのアパートの家賃がどれだけ高いのか知っているだろうか。ちょっとくらい金持ちがいっぱい住んでる国で生まれ育ったくらいで、相手のことをほとんど何も知らないくせに、どっかの負け犬経営者がおのれの無能と向き合うのが嫌で言いふらした宣伝に乗せられて、他の国のことを見下して知ったようなことばっかりいってんじゃねえぞおっさん。

と、いいたいことはたくさんあるのだが、でも結局自分はXXマネージャの親でも親戚でもなんでもないし、彼がそんな世界観を抱いて周囲を見渡して脂ぎった雑念で魂の芯まで汚れきっていたとしても、はっきりいって手助けする義務も義理もないのでどうでもいいのだが、先に書いたように自分も同じような人間のクズだと思われたくなかったので、会議では思わず声を荒げてしまった。

Posted by on 10月 7, 2008 in Education, Work

Comments

  • K より:

    俺は血液型で人を判断する上司がイヤだ。

  • admin より:

    しかし合コンとなれば医者でも血液型の話題をするのが世の中というものだ。

  • コメントを残す