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アスペルガー症候群の社会復帰プラン(1)

かみさんに教わりながら、どうすればマトモな社会人に見えるようになるか毎日考えているのだが、どうもELIZAの手法を実践することが鍵であるらしい。

ELIZAというのは、 バーナード・ショーの有名な「ピグマリオン」(または映画「マイ・フェア・レディ」)のヒロインの名前を由来とするプログラムで、劇中で労働者階級出身の花売りイライザが話し相手の話す事柄についての知識がなくても会話が成立するような返答の仕方を訓練されるのと同様に、ほとんどデータを持っていない状態で構文解析とパターンマッチングにより組み立てた答えを返すようになっている。例えば、「具合が悪いんです」「具合が悪いの?」といった具合に相手の話すことを反復して疑問文にしたり、「私はプログラマです」「そう、それで?」のようによくわからない叙述には曖昧な疑問文で返すのだが、ようするに人工無能と呼ばれるボットみたいなものだと思ってもらえれえばだいたい当たっている。

とはいえ、劇のイライザにはコンピュータからみれば非常に高度な言語の解析能力が備わっているわけで、いくら単純化した答えを返すよういわれているとはいっても、それと同等あるいは上回るほど自然な返答ができるプログラムを作成するのは難しい。この手のボットも普通は2回か3回会話を続けるとおかしいと気づかれる程度の出来映えであることがほとんどだ。

しかし、社会人としてのまともな受け答えというのは、実際のところ、上にあげたボットの会話の例にかなり近い。例えば、「具合が悪いんです」と話す相手に対して、「そうなんだ、ところで、どんな企業もまあだいたい1年の内で社員の数パーセントは必ず具合が悪いわけだから、補欠制度とか作ったりしてるところってあるのかな?」と答えるのはかなり重大なルール違反になる。まず、相手の話すことが単なる事実の叙述であると解釈して、切り捨ててしまっている。ここで重要なのは、話の内容よりもまずは行間にある「私は困っている」という気持ちに対して共感をしてあげることなのだ。だから、「具合が悪いの?」と返すことで、たとえ別に何とも思っていなくても、相手を気遣っているという姿勢を示すことで会話の相手に、私はあなたと同類であり、同じような価値観を共有し、おまけに大変あなたに同情的ですよ、というシグナルを送ることができる。このシグナルがあるのとないのとでは、相手の受ける印象は大きく異なり、また自分の価値を認められたと感じさせることもできるため、相手に好印象をもたれる。実際、自分が面白いと思っている話を相手にぶつけて反応を伺うことで相手という人間を知ろうとするアスペルガー症候群っぽいやり方は相手に好意を抱かせようとしない分だけ「敵対的」な言動と解釈されがちであるようだ。

こうしたパターンマッチングの訓練を繰り返すことで、そんじょそこらのボットには真似できないほど高度な鸚鵡返しが出来るようになれば、社会人としてのステータスを確保することが可能になる。能力の欠如から相手に共感できないのであれば、共感しているというシグナルを発信することでその代わりとするわけだ。

こうしたコミュニケーションを、なんだか不思議なもののように感じてしまうのは、社会性の欠落したアスペルガー症候群の人の悪い癖なので気をつけないといけない。なんだか変なカラクリだと小馬鹿にしていると、会話の相手が突然怒り狂って当惑させられることになる。

Posted by on 3月 9, 2011 in life

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