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杭州印象 その4

この旅行にはほとんど荷物を持たずに来ることにしていました。持ち物はボストンバッグひとつだけ。短パンTシャツにサンダルという出で立ちで、着替えも最小限しか持って来ていません。一応、寒かったとき用にジーンズは持ってきました。それから、直前になって何となく思い立ち、トレッキングシューズをビニール袋に入れておきました。すると、なんということでしょう、呉さんが考えた三日目のプランは登山だというではありませんか。なんでも、浙江省初の世界遺産となった江郎山というところに行くとかで、朝7時に起きて陳さんの車で現地に向かうことになりました。途中、江山市の駅前で腹ごしらえしようとファーストフード店に寄りました。中国で立ち寄ったどの店でもそうでしたが、安いし美味しいし大変素晴らしいです。日本にもこういうのがあるといいですね。

yummy!

この手のお店はだいたいカフェテリア形式になっていて、普通はお粥やあったかい豆腐をすくってご飯茶碗によそったのと、何品かおかずを選んで注文するみたいです。餃子とかシュウマイ、饅頭なんかもおいしいです。それと、もちろん高野豆腐。ただ、注意しないといけないのは、こちらの人は甘いお粥というのを食べるらしく、お粥の種類によってはすごく甘ったるくて驚くことがあります。個人的には、プレーンなお粥に備え付けの塩をふって食べるのがよかったです。それから、飲み物を買うときは注意が必要です。うっかりペットボトルのお茶を買うと、飲んでみたらびっくりするくらい甘いことがあります。事前にホテルのテレビでCMを観ていたので緑茶らしき飲み物が甘いのは知っていましたが、カンフーっぽい外観の缶のお茶には油断してしまいました。あと、ボトルの水はあちこちで売られていますが、ほとんどが普通の水を浄水したものだと明記してあったりします。その辺は正直ベースでいいと思いますが、慣れないと味が違うので飲みにくいかもしれません。探せばボルビックとかもありますが、値段は何倍もします。だいたい日本と同じくらいですかね。それでもって、価格に差がありすぎて現地の人は誰も買わないので、製造年月日が去年だったりします。賞味期限の範囲内なので問題はないですが。

さて、車はいつものように予想したよりずっと遠くまで進んで行きます。大通りを抜けて、市街地から離れると農作業用の車が目立つようになりました。なんでもこちらの車検制度はかなり緩いみたいで、新車と中古車みたいな区別もあまりないそうです。また整備の基準も違うので、結構ファンキーな状態の車も走っています。日本の排ガス規制は素晴らしいなあ、と思いつつ、同じことを中国でやろうとしたら大変だろうな、やっぱり日本は適度に狭くて扱いやすくていいよ、と思います。どうせ規模なら負けるから、これからの日本は大企業へのアンチテーゼとしてのベンチャーみたいな立ち位置で、フットワークの軽さと規模の小ささを活かした細やかな快適さの追求(国民の、ですよ)で勝負した方がいいんじゃないですかね。

途中、ある集落を通っていると、この村は浙江省で一番美人が多いといわれている村だ、と呉さんに教えられました。実際のところ村人たちはどうだったかというと、時間がちょうど昼前くらいだったので、その美女たちとやらは、きっとまだみんな家でテレビでも観てるだろうと思いました。

いかにも中国!

じゃかじゃん!今回の目的地、江郎山です。でっかい岩が3本立っているんですが、真ん中のには登ることはできません(下が細くて上が太いので熟練の忍者じゃないと無理)。

近くで観るとさすがに迫力があります。

孫悟空とかいそうだ

麓には観光料を徴収する事務所と露天が並んでいます。入り口付近には、日本の小学校で履くような上履きがたくさん置かれています。情弱すぎてこんなところにヒールのある靴で来てしまった人のために貸してくれるみたい。さて、登り始めたのですが、なんかこれキツくないっすか?そもそも高地ってわけじゃないから、気温はいかにも沖縄とか台湾とかと緯度が近いって感じだし、これはピクニックじゃないぞ、と出だしから危機感でいっぱいになりました。喘ぐように歩みを進めると、しかし途中にはとんでもない光景が。

しーんぴー、しーんぴー

なんすか、この幻想的でいかにも東洋の神秘っぽい感じ!嫌が上にもかき立てられるこの旅情!すげえなあ。これは確かlinear heavenなんとかとかいうやつで、ようするに3つの巨大な岩の内の2つの間を通っていると、空が一本の線になって、そこから光が漏れてくるという、なんというか天然の光の教会みたいになっています。

もちろん、岩なので何百年、何千年に何回かはでっかい落石とかもあるみたいですが。

落ちた岩は休憩用のベンチになってるよ

しかし、ここでアクシデント発生です。同行した元同僚の日本人、ハギーが高所恐怖症であることを訴え始めたのです。ただでさえ大変な岩だらけの山道を、そんな輩と一緒に進むのは大変過ぎます。丁度いいことに、休憩に向いていそうな大きな岩の裂け目があり、その先の看板には「ここから頂上までは1時間半くらいかかるけど、体調の悪い人とか高血圧とかそういう人はやめた方がいいよ(意訳)」とあります。そこで、携帯電話を持たせてハギーにはここで待ってもらうことにしました。なに、この業界に入って以来、どんなデスマーチにも言われれば引かれていく羊のように参加するといわれる超絶的マゾヒストな彼のことです。これくらいの放置プレーではムズムズすることさえないでしょう。

しばらく洞穴みたいな岩の裂け目で遊んでから、いよいよ頂上目指して出発です。中国の人たちには結構ウケていたらしいですが気付きませんでした。

修行に励む

ニヤニヤすんな!

子供の頃、登山するときはすれ違う人にはちゃんと挨拶するんだよ、と父に教わったので、何度も挨拶してみたのですが、誰も返事をしてくれませんでした。中国にはそういう習慣はないのかもしれません。団体の観光客もいて、なんか上の方と下の方で木霊ごっこをしていたり、誰かがなんか変な雄叫びをあげると、遠くの方からもっと変な雄叫びをあげて、それが前のよりビブラートが効いていてもっとヘンテコだとみんなが拍手したりしていました。道の険しさにもう息が苦しくて仕方がなかったのですが、ここは負けていられないと日本代表になったつもりでヨーデルで対抗したら、辺りは元の静けさを取り戻しました。

オニユリかと思ったらキュウリ

途中、垂直になっているので鉄の階段や梯子を使う場所などもあり、いや本当にピクニックではない道中でした。

晴れてたらもっとよかった

ほんとにキツくてあんまり省略したくない、これを読んでいる人にはせめて冗長な文章で何らかの苦痛を味わってほしいと思わなくもないですが、何度もあと少し、あと少しと思い続けて「あと少し」という言葉の意味が理解できなくなった頃、ようやく視界が開けてきました。ここから先は険しい道もなくなり、木製の階段が現れてトイレの看板も見えてきました。ペットボトルの水を三本くらい飲み干していたので、ちょっと寄ってみたのですが、既に中にいる人が大変なことになっているらしくなかなか出てきません。待ちながら呉さんと談笑していると、前に並んでいるおじさんが「ちょっと待っててね」と日本語で話しかけてきました。仕事で日本に行ったことがあるそうで、発音も上手でした。

頂上だぜベイビー

ぶっちゃけ、天気がよかったらもっと最高だったかもしれません。とりあえずfoursquareでチェックインしておきました。まだメイヤーはいないので、是非挑戦してみてください。

下山の苦労もまた筆舌に尽くし難いのですが、あまりの尽くし難さに省略します。麓で売ってたレッドブル(偽物)を飲んだときの気分は最高です。そういえば、日本でも虫に刺されやすい体質なのですが、ここ中国でも虫に刺されたのはぼくだけでした。

痛々しい

続く

次回予告:「マオんち」

Posted by on 8月 14, 2011 in life

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