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恫喝的マネジメント

昼休みに、トム・デマルコの本(”デッドライン“)に出てくる人物のことを考えた。今いる会社のマネジメントをジョエル・スポルスキの分類に無理矢理にでも当てはめるなら、この指揮統制マネジメントが一番近いだろう。そして、ご多分に漏れず、自分自身がここに書かれているソフトウェア開発者の典型だ:

うぬぼれの強いソフトウェア開発者は特にそうで、彼らは非常に頭が良く、他の人より知識があると思っていて、そう思うのには十分な理由があり、実際その通りなのだが、そのことによって何かをやるように命令されるのをすごく嫌うのだ。

マイクロマネジメント、とはよくいったもので、これはようするにしごきのことだ。開発部門だけでなく営業や企画運用を含めると、うちの会社では定期的に誰かがこれをやられている。つまり、目をつけられたが最後、自分の人事評価について決定権を持つ人物に大勢の目の前で詰め寄られ、激しく詰問され、難癖をつけられ、自尊心の欠片もないやり方でしごかれている。

それも世渡りのひとつ、と割り切れる人は残っている。そうでない人は、次の仕事が見つかればそちらに移動する。理由は簡単、外的要因が仕事の動機の中心なら、取り替え可能なのでいざ取り替える段となったら躊躇する必要さえないからだ。

幸いにも、開発部門でこれをやられる人はそんなに多くはない。多くはない、というのだから皆無というわけではなく、実はかくいう自分も、入社三年目だがその間に一年くらい口をきくことがなくなった上役がいる。最近、ようやく普通に用件があれば会話くらいはするようになったが、今日の午前中でそれも終わった。急に呼ばれた会議室で、いま開発中の案件についてああだこうだと質問されるので、ああだこうだと答えていると、てめえこの野郎、でけえ口叩きやがって、といった具合に罵られてしまった。まだ不具合も出していない(これからのお楽しみ)案件でこうなのだから、何かあったらどんなにひどいことになるのだろう。

それでいろいろ考えてみたのだが、この人物と一年くらい口をきかなくなったのには原因があって、そういえばそのとき、いざこざの原因になったこの案件が片付いたら、もうこの会社は辞めよう、現状の責任はあるわけだから最後まで見届けて、そしたらここにいるのはやめだ、と思いながら、結局片付いたら片付いたで毎日本当に休む間もなく過ごしているうちに、いつの間にか今に至ってしまったのだった。その最中に母親が亡くなったけれど、そういえば取締役で葬儀に来てくれなかったのはその人だけだったな。今の今まで考えたこともなかったけど。

そのときの教訓は、いくら売り上げを積めば幸せになれるといわれても、無理な開発案件はいくらやっても結局誰も幸せにはなれないよ、ということだ。もし何か奇跡が起きてうまくいったとしても、自分の人事について決定権を握っている人物が、自分の家族のことまで持ち出してさんざん馬鹿にしてくる職場で、次もうまくいく可能性はあまり期待できない。ついでにいえば、人事や給料にだって期待できない。なんで我慢したのかというと、もちろんその案件をなんとかしたいというのもあったし、たまには大嫌いで全員まとめてブロック塀で頭をかち割ってやりたいときもあるが、それでも社内には好きな人間たちもいるのと、それからそこまでこちらを馬鹿にするなら、じゃあそこにいて給料をもらう方がかえって嫌がらせになるかな、と思ったからでもある。

今日の会議についてもう一度考えると、まあそこまでカッカしてもらえているのだから、ある一定のレベルの嫌がらせにはなったのかな、といえなくもない。

去年はずっと、そんな中でも自分の価値を高めないといけない、己の価値のコアになるのはやっぱり技術だ、というわけでいろんなことをこっそり押し進めてきた。結構勉強できたし、実装してみたら使っている人に喜ばれる技術もあって、自分はひょっとしたら人事評価ほど無価値な人間ではないのかもしれないと思えるようになった。今となってみれば、まあこれも塞翁が馬というやつだったのかもしれない。とはいえ、それが評価に繋がっているわけではないので、居心地が悪いことには変わりなかった。いくら塞翁でも、心頭滅却したら燃えちゃった、では困る。
恫喝的マネジメントで最悪なのは、それが軍隊でしかうまくいかないことで、軍隊の生活は基本的にキャッチ22なのだ。本来はコードを読んだり書いたりするはずの時間に、こうして糞の役にも立たない日記を書いているのもその副作用だ。

それにしても、三年も同じ職場にいると、他のところがどうだったのかちっとも思い出せない。ひょっとしてどこも状況は似たようなものなのだろうか。だとしたら、ソフトウェア開発なんてさっさとやめてもっとやりがいのある目標を見つけた方がましなのだろうか。

Posted by on 10月 29, 2007 in life, Work

Comments

  • doronjo より:

    似たような境遇にいるのね。でももしかして愛されてるのかもよ??ひどい評価を食らって、そのまま2年も残って気づいたら誰より成果あげてるけど、結局ass kisserがいい給料もらえる会社なのよね。後で地の底に落ちるでしょうね、あのやり方だと。A型上司でしょう?

  • […] 以前のエントリ「恫喝的マネジメント」の中で触れていたマイクロマネジメントがWikipediaにエントリがある言葉だと知った。当時はマネジメントについてこれまで経験したことはどうも間違っているのかもしれないと思い始めて、あれこれ勉強するようになった頃だから、それにしては内容は外していないと自画自賛したい。他に褒めてくれる人がいるわけではないし。 […]

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