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ソフトウェア工学

ソフトウェア企業の競争戦略という本の書評があったので読んだ。一貫して主張されているのは、日本のソフトウェア会社は工業製品を作るみたいな捉え方でソフトウェア開発を理解している、ということ。まあ、現場にいるとその通りと思うことは多々ある。ベルトコンベア方式でソフトウェアが作られるなら管理する側は予測もたてやすいし、リソースの配置も楽だ。

でも、それだけが日本のソフトウェア開発の問題であるというわけでは決してない。それどろこか、例えばウェブ家系図作成みたいな「集客力には貢献するけれども収益モデルがわからない」ようなソフトウェアも、買収されてどこかのポータルサイトのコンテンツになるみたいなはっきりしたゴールがあれば日本からももっとさくさん産まれるはずで、しかも工業生産モデルであろうがなかろうが出てくるところからは出てくるとは思う。

でもそういう経営の仕方はまだ一般にはなじみがない。ライブドアが買ってくれるわけでもなく、Yahoo!が買ってくれるでもなし、ましてや国が金を出してくれるわけでもないのだから、まあ仕方がないのだろう。片やこんな状況で、一方ではTellMeみたいになんだかお金になりそうなサービスでさえ大物の買い手がついている

これにちょっと似た話だが、月額課金の携帯サイトとモバゲータウンみたいな無料コンテンツを提供するサイトとの関係はちょっと面白い。モバゲータウンは有料サイトへ客を誘導する広告なしには成り立たないだろうし(詳しくないけど、たぶんそう)、有料サイトは宣伝のための無料コンテンツや集客そのものをモバゲータウンに任せてコスト削減を実現する。有料サイトは別にモバゲーがなくてもやっていけるだろうが、モバゲータウンは課金するビジネスを他社がやってくれないと破綻する。お金はどこかが出してくれるから、ひたすらアイデアを出して集客だけを増やせばいいというビジネスは珍しいと思う。でもって、モバゲーだって工場みたいな開発モデルを採用していると思うんだよね。

一時期、よく聞かれたのが、マイクロソフトは技術力がない、ちょっといいものを出したと思ったらみんな買収の結果手に入れたものばかりじゃないか、という悪口だが、これはソフトウェア開発の重要な部分を見落としている。常々思うのだが、Excelの開発チームには、80年代からExcel一筋のミスターExcelみたいな人がいたりするのだろうか。だって、ずっと同じプログラムをいじっているのは、特にExcelみたいなものを作ることが出来るような人間にとっては、退屈なんじゃないだろうか。ある程度まで作り込んだら、次のもっと面白そうな分野へと進みたいと思うのがプログラマの人情ではないか。履歴書には輝かしい業績が載っているはずだ。次のステップに進まない理由などどこにもない。マイクロソフトで中間管理職をやるのが夢だ、というプログラマなんかこの世に何人もいないだろう。

ソフトウェアの開発が工学的なモデルにはなかなか当てはまらない、といわれるようになってからはや40年以上の時が過ぎ、フォン・ノイマンが死後50年経過したら開けるようにと遺言したとされる箱はフォン・ノイマンのものでさえなかったというアンチクライマックスも過ぎ、それでもソフトウェア開発と工学とのせめぎ合いは続いているのだから、時の流れは悠久である。だから、Excelの主は今日もExcelチーム専用のコンパイラの最適化作業が楽しくてチビりそうになってんだろうか。

Posted by on 2月 27, 2007 in Software, Work

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