家族百景
長男を寝かしつける前に、久しぶりにお話を聞かせる。今回は息子がベッドの上、父ちゃんは横に立ってコントをやっている。
太郎「どうもー、リーマン太郎です!」
次郎「どうもー、リーマン次郎です!」
二人「リーマン・ブラザーズで~す!」
音:ガラガラガラ、金融ショック!
父「やあ、わたしが父さんだよ」
太郎、次郎「わぁい、リーマン・ブラザーズ倒産だ!」
息子の反応:なし。
次のお話。昔々、あるところにお腹をすかせたかわいそうな兄弟がいました。兄弟は悪い人たちにさんざんいじめられて、冷たい雪の降る寒い冬だというのに、隙間風の吹き込む暗い部屋で、薄い布団一枚に身を寄せ合ってガタガタ震えています。
お兄さんは弟をはげまそうとして言いました。おいしい食べ物のことを考えよう。きっと体があったかくなるよ。弟は言いました。おいら、腹いっぱい天丼が食べたいなあ。えび天、いも天、なんでもいいよ。ああ、天丼ってうまいんだろうなあ。
すると、薄い壁を蹴破って、大きな筆を抱えた弘法大師があらわれました。
「やあ兄弟、腹へってんだってな。なんか空海?違うか」
あっけにとられる兄弟を尻目に、弘法大師は懐から墨汁のパックを取り出すと、大きな筆の先にじょぼじょぼ振りかけて、さっと構えます。
「わがなしそめし技を、よおく見ろ!」
弘法大師は筆をぐわりと一閃させると、兄弟の部屋の天井の真ん中に、大きな点をひとつ描き入れて叫びました。
「天丼!」
もう雪が吹き込むのを防いでくれる壁はありません。兄弟は、しんしんと降りしきる雪の音を聞きながら、やがてゆっくりと、暖かい眠りに就きましたとさ。おしまい。
反応:長男は天井っていう字を知らない。
コメントを残す