T

この冬の読書記録(2)新しい太陽の書

“拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)” (ジーン・ウルフ)

写真入りでは紹介できないくらい、気恥ずかしくなる表紙で再発されたジーン・ウルフの長編。しかし、“デス博士の島その他の物語 (未来の文学)” (ジーン ウルフ, 伊藤 典夫, 柳下 毅一郎)に満足した人なら、中身は問題ないだろう。ちょっと安易な筋書きが見え隠れするのを我慢出来れば、の話だが。散文家、という言い方があるのかどうかは知らないが、凄まじく入り組んで不可解かつおぼろな手がかりしかない状況を描きながら、それがハンス・ヘニー・ヤーンの“十三の無気味な物語”のように、決して荒唐無稽とは思われないようにすることができるのは、希有な才能というべきだろう。

うーん、例えば。ある女がいて、彼女には過去の記憶がない。しかし、自分が処女じゃないと思っている。なぜなら、自分は傷つき疲れて眠る男の側で一晩中起きていて、それで満ち足りることが出来るから。男はその話を聞いて、納得する。こんな描写があるわけだが、この心理の文化的バックグランドが何なのか、理解するのは難しい。それでいて、これだけの内容でもって読者にこのような心理、考え方が人々の脳裏に想起している世界の存在を実感させる。そういう書き手なのである。

Posted by on 2月 15, 2009 in Books

コメントを残す