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ゲートウェイ理論

どこもつながっていない現象を無理やりつなぐ例

今回は大麻所持ということで直接的に誰かを傷つけたという性質の犯罪ではないですが、これがもし傷害や恐喝だった場合にはどうでしょうか。被害者の方がテレビや街中で加害者の楽曲を聞くたびに嫌な思いを感じることもあるでしょうから、そういった方の気持ちを考るとやはり全面的に楽曲の提供が止まってしまっても仕方ないでしょう。

仕方がないという根拠が全く説明されていない。大麻と暴力犯罪とのつながりはどこの宇宙からやってきた話なのだろう。ずいぶんと突飛な意見にみえる。なぜここで暴力事件だったらこうなるから、大麻もしょうがない、という論の進め方になるのか。ギャグなのだろうか。

また、大麻はより強力な薬物を求めて薬物依存にまっしぐらに進む第一歩となりうる危険なものであることから、違法薬物が暴力団などの資金源になっていることや、薬物依存により引き起こされる凶悪な犯罪の被害に遭われた方などにとっては「大麻所持」の事実だけでも多大な嫌悪感を引き起こすかもしれません。そこまで考えれば今回の事例でも全面的な出荷停止となったことはやむを得ないとも思います。

「大麻はより強力な薬物を求めて薬物依存にまっしぐらに進む第一歩となりうる危険なものである」というのは、典型的なゲートウェイ理論である。大麻がよりハードなドラッグへの入り口となる、という考え方だ。

大麻情報誌として有名なHigh Timesを読むことがより強力な読書への入り口にはならないというOnion.comの秀逸な記事がある。基本的に、ゲートウェイ理論というものにのは、相関関係と因果関係とを意図的か無知によるものかはわからないが混同しているという根本的な欠陥がある。これを利用した有名なギャグに、チャーチ・オブ・フライング・スパゲティ・モンスターの「地球温暖化と海賊の減少」というこれまた秀逸なネタがある。地球の平均気温の上昇と海賊の減少には相関関係はある。因果関係があるかどうかを無視すれば、海賊の減少こそが地球温暖化の原因であるという愉快なグラフができあがる。

大麻に手を出すことの社会的背景とか、よりハードな麻薬に手を出してしまう人を取り巻く状況とかを一切無視すると、ゲートウェイ理論は非常にわかりやすい理論的説明の姿になることができる。なぜなら、それは因果関係を無視して相関関係しか見ないグラフのようなものだからだ。だから、ギャグとしてはなかなか面白い。

もちろん、大真面目に唱えるなら、それはただのバカである。因果関係の説明されない相関関係は冗談でしかない。たとえば、外国人による犯罪の急増を声高に唱える人たちの多くは、日本在住の外国人の増加と犯罪件数の増加という相関関係を見ているが、その因果関係として、たとえば貧困であったり合法的な経済搾取といった問題との関係は見ようとしない。あたかも犯罪に手を染めるのが一種の「外国人性」であるかのように語る。ゆえに信用できない。

暴力団の資金源になるから、という理由は至極真っ当であり、それこそ問題だと思うのだが、そういった意味では資金源になるものは他にいくらでもあり、また資金源にしないためには合法化するという手も十分効果的であることを考えると、説得力は弱まる。

別に経済が全てというわけではないが、この不景気でレコード会社も余計な手間を抱え込みたくないから出荷停止もやむを得ない、なら話はわかる。たいした売上にも貢献していないから誰も彼を庇わない、という理屈もよくわかる。上の引用元のようなことを書いて平気な人間が実際にいるわけだから、そりゃレコード会社もテレビやラジオも面倒くさいだろう。

Posted by on 2月 20, 2009 in News

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